ひげしゃちょー

凶悪のひげしゃちょーのレビュー・感想・評価

凶悪(2013年製作の映画)
4.8
当初は藤井がどのようにこの事件を追って、そこで起こる心境の変化みたいなのが見所なのかと思ってたけど違った。もっと深い。 凶悪犯を暴いていくジャーナリストの鏡のような藤井は家庭では複雑な事情を抱えている。 認知症の母を妻に任せっきりで老人ホームに入れて自分が罪悪感をもちたくないから妻の話を流して仕事に逃げている。 とても立派な人間とはいえない。 そんな藤井と須藤が面会している中のあるシーンにより観客と藤井が一体になることができる。 あれによって藤井と同じ目線で観ることができるようになった。 そんな藤井が取り憑かれたように取材をして、明らかになった3つの凶悪事件はどれもえげつない。 生き埋めにしたり、バラバラにして焼却炉に埋めたり、酒を多量に飲ませて殺したり、とにかく酷い。 法廷で藤井が言ったことと同じ感想を持ってしまった。 そんな状態で先生に言われる最後の一言。「私を殺したいと一番強く願っているのは、被害者でも、おそらく須藤でもない。(お前だ)」と。 ズシンときた。 藤井や藤井の妻と同じようにいつの間にかこいつなんか死ねばいいのになんて【凶悪】な心を持ってしまっている自分に驚いた。 とにかく生々しくて重くて凄い映画。構成も見事だし、役者も見事。 とても3週間で撮影したとは思えない。 あれだけ心境の変化が起こる面会のシーンは2日で撮影したらしい。 特にリリー・フランキーに関してはプロ顔負けの名怪演。