桃田はぢめ

凶悪の桃田はぢめのレビュー・感想・評価

凶悪(2013年製作の映画)
4.3
悪人ぶってる悪人よりも善人ぶってる悪人が一番凶悪。善人ぶって木村と須藤に殺された人が報われるようにとこの二人をムショにぶち込んでこの世から葬ろうとした主人公の藤井。善人ぶってるくせに腹の中では誰よりも木村と須藤が死ぬことを願っている。そんな藤井も二人と変わらない凶悪な人間。

場面転換が秀逸。藤井が汚れた窓を拭き、室内が見えたところで七年前に遡る。それから木村と須藤のターン。そして冒頭の佐々木、日野、五十嵐のシーンと繋がり、殺された動機と経緯が明らかとなる。ラストのカメラが引いていくのも捉え方によっては、という感じでおもしろい。

リリー・フランキーの発狂に近い高笑いが狂気的でひたすら恐怖を感じたけどこれがまたいい。動き方も最高に気持ち悪い。人の命を金に替える錬金術師。お人好しで人の懐にするりと入ってくる懐っこいところもなんか嘘くさくて好き。法廷で須藤を睨む顔とラストの歪んだ口元が最高。

そして今回そんなリリーよりも目を引くのが須藤もといピエール瀧。大人しいと思えば瞬間湯沸かし器な性格は全然直っていない。でもしばらくすればまた大人しくなる。かなりの情緒不安定。心の弱い人間は何かに縋りたがる。依存できるものに頼りたがる。須藤はまんまとキリスト教に溺れた。段々狂信者に成りゆく姿がおもしろい。ポエムを綴ったり、神の教えを奉り、悟りを開いた表情をする。法廷での口調もヤバい、最高。どうして宗教に沼らせたのだろう。事実なのかな?
コテコテ外道ヤクザからキリスト教に入信した元ヤクザの須藤が一番おもしろいキャラクターです。