櫻イミト

ガラスの墓標の櫻イミトのレビュー・感想・評価

ガラスの墓標(1969年製作の映画)
4.0
アンナ・カリーナ「ANNAアンナ」(1966)の画の雰囲気が抜群に良かったので、この機に前から観たかった同監督の「ガラスの墓標」を鑑賞。北野武が影響を受け、松田優作が愛した一本。


「ANNAアンナ」と同じく中身は薄いが、イージーなカメラと退廃的な雰囲気が抜群にカッコ良いノワール。男2人と女1人、兄貴を慕う弟分の姿にはホモセクシャル的な要素がみられ、このあたりも東映アウトロー系に類似。3人の構図は同年のドイツ・ファスビンダー監督「愛は死より冷酷」(1969 )とも似ているのだが、落としどころはフランス流でお国柄を感じた。

フランス産ジュテーム要素の入ったニューシネマ。というか、70年代東映アウトロー路線は間違いなく本作の影響を受けているだろう。特に松田優作シリーズ。ゲンズブールによる劇伴は大野雄二とかトランザムみたいだし。

ゲンズブールの憂鬱な中年アウトローぶり。やたらと全裸になるバーキン。二人の出演作はこれまでほとんど観たことなかったが今作はとてもキャラが立っていて魅力的だった。弟分のパウル・ニコラスも青春アウトロー感があって良い味を出していた。

※フランス原題は「CANNNABIS(大麻)」。映画に大麻パーティーのシーンが一瞬出てくるが本筋とは殆ど関係ない。暗喩なので読み解きたいところ。

※パウル・ニコラスはケン・ラッセル監督「リストマニア」(1975)でのワグナー役も印象的。
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