Hana

桃太郎 海の神兵のHanaのレビュー・感想・評価

桃太郎 海の神兵(1945年製作の映画)
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『戦争のある生活』
151p〜

本作品には、むしろそれが非戦時的な性格をもっているとの 評価が、しばしばなされてきている。このような誤解は、戦時期の国策映画、特 に軍事を扱った作品についての無理解と、それに先行する印象論によって生み出 されたものであろう。国策映画である以上、それは自軍の勝利や宣伝を、ただ闇 雲かつ声高に唱えた粗雑なものに違いないという先入観は、実際に個々の作品に 向き合った際にもろくも崩れ去る。
(中略)

加えてこの種の「誤解」は、手塚の感想に顕著なように、本作品が描いている 軍事的、植民地主義的な状況を完全に見失っている。本作品で動物たちが一見楽 しげに戯れているシーンは、軍事教練や南島での基地建設と皇民科教育を描いているものであるし、またそもそもそうしたレクリエーション的性格をもつシーン が、他の国策映画に存在しないわけでは、全くない。このような意味で、手塚が 言うような本作の「平和」性は、あくまで当時の日本人が軍事膨張主義の観点か ら示した「平和」に他ならない。よってこの種の議論を前提として考察を進める ことは、自動的に、当時の植民地主義と死へのイデオロギーを追認する誤謬を犯 さざるを得ない。
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