かのん

嘆きのピエタのかのんのレビュー・感想・評価

嘆きのピエタ(2012年製作の映画)
3.6
産まれて間もなく親に捨てられ、30年間天涯孤独に生きてきた男ガンドI(イジョンジン)。彼は債務者に重傷を負わせて障碍者にさせ、その保険金で借金を返済させる血も涙もない借金取立て屋だった。ある日、ガンドの前に母だと名乗る謎の女ミソン(チョミンス)が現れる。その話を信じないガンドは邪険に扱うが、無償の愛を注ぐ彼女を受け入れ始める。しかし、突如ミソンが行方不明になり、助けを求める電話がかかってくる…。

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臓器、逆向きの時計、手掴みで持ち帰る鶏や兎と、異質さをつくる演出が多々あり。手持ちなのかブレブレで映ったりズームになったりと、綺麗すぎないその映し方がさらに異様さをつくりだしている。それでいて債務者の手を機械に突っ込ませるような直接的な描写は映さないので目を背けることなくギリギリ観ていられる。

原題でも邦題でも出てきている「ピエタ」は、聖母子像の中でも死んで十字架から降ろされたキリストを抱く聖母マリアの彫刻や絵の事を指している。ポスターでもミソンがガンドを抱いており、悲しみに暮れた母が子どもの亡骸を抱えている。最後に観終わってみると、再度タイトルに考えさせられる。

与えられたことのない無償の愛を受けてミソンが自分の全てになっていくガンド。このまま彼が幸せならいいのに、と思えど今までやってきたことは許せるものではない。ミソンの心の叫びと葛藤も痛切すぎて刺さった。誰にとっても救いのない終わり方、でもそういう世界観をみせたかったんだろう。
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