近藤啓二

スター・トレック イントゥ・ダークネスの近藤啓二のネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

リブート版第二作。

前作と違って、キャラクター達のさらなる掘り下げが行われており、よく言えば重厚な、悪く言えば暗い、物語になっている。
しかしながら、前作では本シリーズの顔でもあるカークがやや軽く扱われていた感もあったが、オリジナルからのバトンタッチを行うものだった。本作の掘り下げはそのバトンタッチをより盤石なものにした、秀逸なものと思える。
特に今作の試練と、ラストの決断は新生したカークをオールドファンを納得させ、また安心させるに十分なものであったと言える。

また本来、艦隊の船長が気軽に身一つで船外に飛び出していくことなどありえないのだが、オリジナルシリーズではカーク、スポック、ドクターマッコイ(ボーンズ)の三人の冒険が具体的なビジュアルの主軸になり、ミスター・カトー(スールー)、ウフーラ、スコット、チェコフらが脇を固めるといったキャラ階層がある。
本リブート版もオリジナルの配置を踏襲しながら、ウフーラを現代風の独立心旺盛な女性像へと効果的なアップデートが施されている。

特筆すべきは、本作が旧映画版第二作「カーンの逆襲」に紐づけられていることだ。

カーンはオリジナルTVシリーズではカークに追放されたが、映画版ではその惑星壊滅に伴い、カークに復讐を企てんとして自滅する。
その際、エンタープライズ号も緊急事態に陥り、それを救ったのがスポックだった。

この「イントゥダークネス」のクライマックス、カークが自らの命を懸けてエンタープライズを救うシークエンスは、この旧映画作からの引用がある。
劇中、新スポックが旧スポックから聞かされるのは、この、旧世界での事実である。

前回でこのリブート版が「並行宇宙における、もう一つのスタートレック」として位置づけられたが、この展開は新しい俳優によるキャラクターたちの根付きを十分うながすとともに、オールドファンにとっても嬉しい驚きと感動を呼ぶものであった。

最後に、その重厚なドラマを生み出す大切な原動力になっているのが、ベネディクト・カンバーバッチであることはもちろんである。
彼には「ドクターストレンジ」の人という認識しかなかったが、拘束室でのその目の演技は、本作とカーンという名敵キャラを象徴するにふさわしいものであった。
近藤啓二

近藤啓二