たく

かれらに音楽をのたくのレビュー・感想・評価

かれらに音楽を(1939年製作の映画)
3.6
廃校の危機を迎えた音楽学校が偉大な音楽家に救いを求める話で、プロットとしては「オーケストラの少女」と同じだったね。さすが超一流のハイフェッツを器用するだけあって、長めの本人演奏でその精緻極まるテクニックを十二分に堪能できた。

不良少年のフランキーがある日偶然聴いたハイフェッツのコンサートに衝撃を受け、質に入れてたバイオリンを引き出して練習を始める。その曲目が冒頭でも流れるチャイコフスキーの「アンダンテ・カンタービレ」なのがびっくりするんだけど、小さい頃に習ってたという説明が付いて納得。音楽学校でその音感の良さを買われて特待生として入学するトントン拍子の展開で、あんなに手に負えない不良少年だったのがすっかりしおらしくなっちゃうのが笑った。

ハイフェッツ登場シーンでサン・サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」が長めに演奏されて、彼の音楽性をとことん味わえるのが素晴らしい。彼が廃校の危機を迎えた貧乏音楽学校の唯一の救いの鍵となり、フランキーがなんとかハイフェッツを学校の演奏会で演奏してもらって危機を回避しようと奔走するのが泣かせる展開。劇中に登場する音楽は「セビリアの理髪師」や「子犬のワルツ」、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲などメジャーなものばかりで、誰でも楽しめる作りになってたね。不良少年が自らの才能を買われて立ち直る話はちょっと「ローズメイカー 奇跡のバラ」を思い出した。
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