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共喰いのyadokariのレビュー・感想・評価

共喰い(2013年製作の映画)
3.8
田中慎弥の原作を青山真冶が映画化。満点ではないがかなりいい。思うに中上健二の世界が被さる。『共喰い』も近親相姦的な愛憎劇なんだが、主人公が17歳という年齢が青臭い。そうか大江的なのか。

青山真冶監督は情景を撮るのが上手い。クマゼミ鳴く緑の山、ツクツクボウシの神社、川の生き物と粗大ゴミ。それと雨の情景。その自然と人が相混じるところの川が印象的な場所として存在する。産みの母が魚屋をやる店。田中裕子が凄くいい。空襲で無くした義手がアイアンクローで魚を捌く道具=身体性。

身体性を語る映画でもある。父(夫)は暴力男で女を殴ってセックスで快感を得るタイプ。映画ではいまいちなのは、やっぱこの役は三國連太郎しか出来ないような気がする。愛人がいて、息子にも彼女がいて、父に似てくるのを怖れている。父殺しがテーマとしてあるのだ。それを解決するのが母性なのか。

息子はお坊ちゃんだよね。女たちに守られて生きている。一番は母親だろう。そのラストの決着の付け方はいい。その後にエピソード的に展開させるのは冗長なような。特に愛人とのエピソードは要らない。恋人は未来を予感させるものだから親切といえば親切だけど。母親との対面で物語は終わっている。

うなぎが男性シンボルになるマンガがあった。エッチな夕刊紙の欲望。昭和だ。昭和のレクイエム。田中裕子演じる母親が「あの人が血を吐いたんだって。あの人より先に死ねない」とか言うセリフに凄みがあった。
(2013年09月14日)
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