うえびん

サイの季節のうえびんのレビュー・感想・評価

サイの季節(2012年製作の映画)
3.5
溶け合う
情景-心情-詩情

2015年 イラク/トルコ作品

情景描写が美しい
様々な灯り
波のしぶき
降り積もる雪


真上からのカメラアングル
車の車窓から見える景色
独特な画角が印象的

タルコフスキー監督の
『ノスタルジア』のよう

時は1979年イスラム革命
ある男アクバルの企てで
不当に逮捕された詩人のサヘル
30年後の2009年
長年の投獄から釈放された彼は
最愛の妻ミナを捜し始める

二人の再会と
離れていた間の出来事
現在と過去が
詩人サヘルの詩情と交錯する

サヘルの心情を想像すると
アッバス・キアロスタミ監督の
『桜桃の味』が思い起こされる

サヘルの詩に沿った
幻想的なイメージと現実世界の描写
2つの世界が入り乱れて
独特な世界に惹き込まれる

イスタンブールの“ヒル”療法
空から落ちてくる無数の“亀”
車の窓から頭を入れる“馬”
大地を駆ける“サイ”の群れ
動物の使い方も独創的

「国境に生きる者だけが新たな祖国を創る」

サヘル、アクバル、ミナと二人の子
登場人物の相関は
分かりづらかったけれど
激動の時代に翻弄された詩人の
苦悩に満ちた人生
独特で繊細な感性
心象風景
が描かれた
「詩の映像」のような作品
うえびん

うえびん