グラビティボルト

眠れる美女のグラビティボルトのレビュー・感想・評価

眠れる美女(2012年製作の映画)
3.8
ベロッキオによるイタリアで起こった尊厳死を巡る議論が巻き起こった数日間の群像劇。
賛成派、反対派が一瞬交わるカフェで突如水を顔にかけられる場面を筆頭に、終始唐突な動作と唐突な死の予感に溢れていて、複数場面が錯綜する作りでもぐいぐい観れる。傑作。

デモで議員の娘と思想が過激な弟を持つ男が出会う場面、二人で秘密の電話をしながら歩くショットの中でデモが行われてるのが好き。
大きな思想のぶつかり合いに揉まれる個人達の映画を撮らせるとベロッキオはとことん強いんだな。
自殺志願者の女性も気性と眼光の荒さが素晴らしい。

彼女を病院のベッドに寝かせて以降、医者が一貫して彼女の生存の為に動いているのが良い。
ラストシーンでも、寝てるかと思いきやガッツリ目を開いてるし。
対して、彼女は散々焦がれていた自殺を中止し、医者の「趣味の悪い靴」を脱がせる悪戯をするんだけど
ここのバツの悪さが堪らん。

あと、議員の男が寝たきりの奥さんの生命維持装置を切ってしまう場面は装置の見せ方が上手かった。
普通ならすぐ装置のアップに切り替わる所を、男の背中をが動いた所に装置があるショットの一連で見せてる。何気ない動きが不穏になる細かいアイデアが活きてる。