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眠れる美女の豚のレビュー・感想・評価

眠れる美女(2012年製作の映画)
3.2
植物人間となってしまった少女エリアーナを巡り、3つの登場人物の物語が展開されるヒューマンドラマ。
題材、展開ともに非常に重々しく、また3つのストーリーが入り混じるため、簡単に噛み砕けるような構成になっていないのが特徴。

正直前半はかなり退屈で、なかなか苦痛を感じる瞬間も多いのだけれど、中盤の出来事をきっかけに物語が一気に推進し始めるので、いかにそこを乗り切れるかどうかにかかっている気がする。
パッと見あまり関係性がないように見える3つの物語も、エリアーナというある種のマクガフィンを中心に絡まり合っており、環境や心情、社会的立場の違いによって同じ出来事を別角度で描くという手法が取られている。

イタリアという土地柄か、非常にカトリックの価値観に根差した絵が多く、テーマそのものだけ見ても、根強く残るカトリックの「安楽死の反対」という姿勢と、司法における「安楽死の認可」という背反する事柄を同軸に描き出している。
宗教、司法、さらには政治と一般市民というさまざまな立場の人間たちの思惑を交えながら進んでいく1時間55分はおいそれと語れるほどの軽さはなく、心に残るものも非常に大きい。
果たして自分が彼らと同じ立場に立ったとき、寄り添うのは思想・倫理・愛、いずれなのだろうか。

全編にわたって重く苦しい展開が続きますが、登場人物たちの重厚な演技に見入ります。
映画的面白さというよりも、ドキュメンタリー的なキャラクタードラマに重きが取られているので、そこを注視しないと物語が頭からすっぽ抜ける恐れもあります。
ただあまりにも展開がシリアスすぎるので、観ていて非常に疲れます。
「眠れる観客」と皮肉った評価もありましたが、なかなか言い得て妙……。

マルコベロッキオ、初めて観たけど重いよ~。
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