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眠れる美女のchicaのレビュー・感想・評価

眠れる美女(2012年製作の映画)
4.8
まぎれもない傑作。芸術。

美女は眠っている。
植物状態で眠っている女性たちは起き上がることはない。
薬物中毒で治療を受けて眠っていた女性は起き上がり窓を開ける。

尊厳死の問題を扱った話だけど、尊厳死が良いとか悪いとかいう議論にとどまることはない。
生きさせるのか、死なせるのか、それを選ぶ周囲の人々の、広がりを持った愛の物語だと思った。

娘を愛しているから生かしたい母、イザベル・ユペールは相変わらず怪演だった。
大女優が引退し、植物状態になった娘の看病に明け暮れる。そしてカトリックに傾倒する。ただ、中盤、彼女が「神を信じられない」と語るシーンはとても印象的だった。ほとんどカメラの方をみて、観客に告白するようにそのセリフを言う。その前に涙をぽろっとこぼす。素敵だった。


妻を愛しているから楽にしてあげようとした夫と、その娘
彼女は最初尊厳死にも反対し、カトリックに傾倒していたが、娘が恋をすることによってその考えを変えて行く。

夫は国会議員で、ちょうど議会で尊厳死の問題を扱っており、思い悩む。
印象的だったのは風呂場のシーンで精神科医に相談するところ。シーンの内容ではないけど、カメラアングルがよかった。会話の場面で、話されている側の目線にアングルが合わせてある。内密な話だっただけに、役者に心的距離が近づいていった感じがした。(他の場面でもこの手法をやってる)

死にたいのに生かされる女は、薬物中毒で病院で確保されるも、命を救うことは馬鹿げているという。なぜ自分を救うのか彼女に問われた医師は、彼女を叱責する。人間愛という言葉は勢いで出たものだとしても彼女に届く。

靴を脱がされた医師、目を開けてじっとみているの、良かった。


議会、そして植物状態の患者エルアーナの報道をテレビを通してそれぞれの物語へつなげていっていた。

すごすぎると思う。この広がり…
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