あきらっち

インポッシブルのあきらっちのレビュー・感想・評価

インポッシブル(2012年製作の映画)
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この映画は、2004.12.26に起きたスマトラ沖地震によって発生した津波に巻き込まれたある一家の実話をベースにした作品である。

主演はユアン・マクレガーとナオミ・ワッツ。

タイのリゾート地でバカンスを楽しむ為にやって来た主演2人と3人の子供達の計5人。クリスマスの翌日、楽園を津波が襲う。

突然の津波の出現。
飲み込まれるリゾート地の全て。
そして引き波の恐ろしいまでの力。

東日本大震災では岩手県宮古を襲った津波のスピードは時速115Kmだったと言う。

映画はとてもリアルな映像だった。
キャストの演技、特にナオミ・ワッツの死相すら感じさせる演技は、生々しく観ているのが辛いくらいだった。
圧倒的な悲劇の中で、家族がバラバラになってなお、助け合い、諦めない人間ドラマがあったことも本当のことだ。

だが、実際の津波の現場や人々の混乱、悲しみは、映画の比ではなかったであろう。悪い行いもあったと聞く。

演出で誇張していたり、エピソードを追加したりしていることはないが、総てを描くには観る側にとって刺激が強すぎるので、どこまで見せるかというのは非常に難しいことだったと思う、と実際モデルとなった家族が話したという。

映画やメディアでは伝えられない、伝えることのできない、現場の生の姿。

体験していない者が、おいそれと語れる筈もない津波の恐怖や現場の混乱。
地獄絵図だったことだけは、まぎれもない事実であろう。


2010年8月に制作が始まり、公開されたのは2012年12月。

その間、2011.3.11に東日本大震災が発生したことになる。

もし公開が東日本大震災の前であったら、津波の恐怖を少しは理解し助かった命がもっとあっただろうか…

映画には力がある。
人生を変える、とてつもない力を秘めていると信じている。

以前レビューした“遺体 明日への十日間”もそうであったが、映画で描ける部分は一部かもしれない。

観た者が何を感じ、何を考えるか。
人に寄り添う気持ちや、決して諦めない気持ちもそうだ。

この映画は作り物の物語ではない。
まして感動を押し売りするものでもないだろう。
震災を体験していない多くの人が観て、少しでも津波を知り、未曾有の災害を考えるきっかけとなればいいと私は思う。
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