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スプリング・ブレイカーズのambiorixのレビュー・感想・評価

スプリング・ブレイカーズ(2012年製作の映画)
3.9
これはめっちゃ嫌いな人とめっちゃ好きな人とがぱっくり分かれて、かつめっちゃ嫌いな人がめっちゃ多いタイプの映画なんでしょうね。かくいう僕も前半はめっちゃ嫌いでした。
映画のもっともすばらしい機能のうちの一つというのは、実人生では絶対に関わり合うことのないであろう人間の生き様を垣間見せ、それを限りなくリアルなかたちで追体験させてくれるところにあると思うんだけど、そこへいくとこの映画はその極北っていうか、主人公の陽キャ女子大生4人の行動原理はぶっちゃけ微塵も理解できないししたくもない。理解できなさでいったら、宇宙人やエイリアンなんかと大差ないレベル…なんつってたら中盤のフロリダのシーケンスにはさらにやばいのが出てくる。しかも自分でエイリアンを名乗っちゃうもんだから思わず笑ってしまった。
そして、物語はこのあたりからある種(あくまで日常と地続きの)異世界もののような様相を呈しはじめます。押井守の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』的な、永遠に終わらない春休み。それを象徴するのがフラッシュフォワードとフラッシュバックを混ぜ合わせたような独特な語り口(つっても全編通してこんな感じではあるんですが)で、同じシーンの中で違う時間軸のカットがくるくる切り変わり、自分が今見ているのが未来から見た過去なのか、あるいは過去から見た未来なのかが分からなくなってしまう。画面から「現在」がすっぽり抜け落ちてしまう。あとは、ジェームズ・フランコ演じるエイリアンのカットバックみたいな喋り方も特徴的。前に言った文言を間を置いて何度も何度も反復する喋りでもって観客のもつリニアな時間感覚に揺さぶりをかけ、嘲笑ってくる。
そうこうしてる間にグループのノリについていけなくなった1人が抜け、さらにもう1人抜け、キラキラしたフロリダから元いたクソ田舎に帰っていくわけですが、このバスの車内をとらえたショットも素晴らしい。ギャングが支配する地獄の空間から抜け出せた安堵のというよりは、むしろ脱落者・負け犬のような表情を浮かべていて、それはもちろん、フロリダが理想の楽園ではなかったことに対する失望の表れでもあるんだろうけど、それ以上に、大学生活というモラトリアムの終焉と否応なしに向き合わされる絶望感みたいなものもあったと思う。主人公を中学生や高校生ではなく大学生に設定したのはそういう意図があってのことなんだろうか。
その一方で残った2人はといえば、ビューティフルドリーマーのラムよろしく終わらないスプリングブレイクの中に引きこもることを選んだわけだけど、刹那的な享楽の彼方ではカタストロフがでっかい口を開けて待っている。と同時に引き返したところでそこに救いがないことも彼女たちにはおそらくわかっていて…というじつに何ともしれんラストだけど、自らの意思ですすんで破滅を選びとる主人公ってのは個人的にやっぱり嫌いになれないんだよなあ。
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