こころとからだ

火車 HELPLESSのこころとからだのレビュー・感想・評価

火車 HELPLESS(2012年製作の映画)
3.9
キムミニのオンステージ。キムミニの力量と魅力をこれ以上に味わえる作品はないのでは。

ある意味、ノンフィクションにも見える、細かくてリアルな物語。かなり引き込まれて夢中で見た。おもしろい。

DVDパッケージの裏面が割とドロドロのグロっぽい感じで、見るのをずっとためらっていたが、実際はかなり配慮されていて、グロシーンや目を背けたくなるような暴力、性的なシーンはほぼない。

ラストは「偽らない」結果だったのか。生まれたときから、人生の難易度は人それぞれ設定され、自分の力だけではどうしようもなく、抜け出せない人もいる。善良に生きていれば、報われるどころか、どんどん堕ちていく。

そんな境遇時に、蝶のように醜いサナギから美しい成虫へと新しく姿を変え、広い世界に飛び立つためにはどうすればいいのか。知恵を絞り、もがけばもがくほどキムミニと同じ道を歩んでしまうかもと、多くの人が共感することだろう。

ラストシーンは大体蛇足なことが多いが、この作品に関しては、その後、主人公がどうこの出来事と向き合うのか、どう解釈して受け入れるのか、それとも拒絶するのか、一例を示してもらえると自分としても参考にできたと思うので残念だ。

クジャクチョウのポイントといい、宮部みゆき原作とだけあって、細かい設定は見事だった。"ヘルプレス"というサブタイトルも、この作品を一言で物語っていて、記憶に残る。

チョソンハの存在も、この作品の大きな魅力だ。演技のうまさはもちろん、徐々に情熱を取り戻していく姿は、それだけでもひとつの作品を見ているよう。

「パラサイト」での演技が記憶に新しいイソンギュンもハマり役だった。神経質で真面目で、あまり人としての深い魅力を感じさせないキャラクターを演じさせると、生き生きと輝く。