ガリガリ亭カリカリ

さよなら渓谷のガリガリ亭カリカリのレビュー・感想・評価

さよなら渓谷(2013年製作の映画)
3.7
生涯許さない女と生涯許されたくない男の不幸せな営み。世界でお互いしか受け入れられない関係性を契約し、破滅することも破滅させることもできないまま、復讐にも贖罪にもならないセックスが日々発生するホラー映画。セックスしないと、お互いの存在の根幹が揺るがされるようで、「ねぇ、しよ」が呪いの言葉のように映るし、心から厭な気持ちになるベッドシーンばかりだ。

元ラグビー選手で現在は下っ腹が出ている(下っ腹を鏡で見るシーンがある)大森南朋のキャラと芝居が良くなくて、映画のリズムにそぐわない。だからラストのやり取りも、そんな適当な切り返しと、それっぽい問いかけで終わってしまうのは、終わった気になっているだけであまりにも凡庸な着地だと感じた(そもそも、あの問いの回答は一つしかなくないか?)。
文学なら気の利いたラストなんだろうけど、映画はそう簡単に「終わらせてくれない」と思う。
相棒の鈴木杏は、キャラも言ってる内容も違和感なく良かった。

刑務所での面会でする、冷蔵庫の豆腐の会話はとても良かった。「冷蔵庫の豆腐、今日までだろ?」

病み病みの極地を演じた真木よう子はベストアクト。劇中のかなこが歌唱する椎名林檎提供の主題歌も素晴らしい。
とは言え、なんでこんな酷い目に遭わせたがるの?という露悪のステレオタイプが感じられて、そのためにキャラクターが消費されてる感じは、あまり納得できたとはいえない。

撮影は自然の明るい面と暗い面を表現できていて美しかった。ショットが良い、とはあまり思わなかったけど……

「死ねって言われたら、俺死ぬから」
「幸せになりそうだったからです。一緒に不幸になると約束したから」
いい台詞なんだけど、映画というより文学だな〜〜って感じ。