『ごく普通に見える夫婦。だがふたりは残酷な事件の被害者と加害者だった』
キャッチコピーから既にネタバレしている。
ましてや劇場予告を観ようものなら残酷な事件も容易に想像ついてしまう。
これは制作側に何らかの深い意図があるに違いない...と調べてみたら大森監督は次のように述べている。
「そりゃ本当は作り手としてネタバレはイヤですよ。でも、観客にとっては『さよなら渓谷』と言われても何の映画かわからない。ネタバレはイヤだけど、お客さんが入らないのはもっとイヤですからね」
ネタバレしてでもインパクトが欲しかったようだ。
それにしてもここまで正直に語ってくれる大森監督は気持ちいいほど潔い!
しかし この映画...ネタバレしていた方がおもしろい!
被害者と加害者が一緒に生活していたという意外性より
‟なぜ被害者と加害者が一緒に生活していたのか”
そこに視点を置くと単なるサスペンスやミステリーではなく生きるのが下手な男女の上質な人間ドラマとして観ることができる。
真木よう子の濡れ場シーン...見せないエロスもありですね。
大森立嗣監督の実の弟である大森南朋(二人とも名前が読めません!)と存在感抜群の鈴木杏...たしか《ヘルタースケルター》でもコンビ組んでましたよね。
清純派女優の鶴田真由の思い切ったキャラ変換...この映画で一番おどろきました。
器の小さい出来る男を演じさせたら右に出る者はいない井浦新(ARATA)など、しっかり脇もかためています。
「憎しみ」か「償い」か…それとも「愛」か!?
人によって感想が割れると思いますが、私めは最後は「愛」だと信じたい。
不幸という名の列車に乗って終点まで向かう二人。
一番不幸になってほしいのは「オレ昔○○○したことがあるんだぜ」とホステス相手にドヤ顔で自慢している天性の悪役顔の新井浩文君、あなたです。