映画漬廃人伊波興一

まぼろしの市街戦の映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

まぼろしの市街戦(1967年製作の映画)
3.4
喉元が絞り上げられるように逆流した生暖かい胃酸が胸を刺しているのに、気味悪いほど甘美な何かの心情の塊に満たされてしまう。
これこそが風刺画の醍醐味❗️
フィリップ・ド・ブロカ
『まぼろしの市街戦』 
ロシアのウクライナ侵攻から一年、連日のウクライナ民の暮らしの様子を見るたびに胸痛む毎日ですが、そんな折に『まぼろしの市街戦』という戯画に巡り会うのは何の因果か。
まず秩序の感覚が消え、まとまった意思が引き剥がされ、想念の飛沫が閃いては散っていく。
普通ならそうして何かが濃縮されていっても良さそうなのに、結局核心の部分は言葉のない暗黒でしかない。
それが戦争の愚かしさというものか。
この映画の主人公は靴も軍服も脱ぎ捨てて、素っ裸になり精神病院に自由を求める件で幕を閉じます。
船酔いとも眩暈ともつかない身体の痺れを観ている私たちに残したまま。