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終戦のエンペラーのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

終戦のエンペラー(2012年製作の映画)
3.6
      恋愛エピソード入り

天皇の戦争責任を回避するまでのGHQの10日間を描いたアメリカが制作した2012年の娯楽映画。アメリカでは美化しすぎだと批判されたが、日本では好評だったとあります。日本人のノンフィクションライター(元新聞記者)岡本嗣郎の著書が原作。日本人として安心して観てはいられましたが…

読んでいないのですが、原作はノンフィクションであり、戦争責任回避に奔走したボナー・フェラーズ準将とキリスト教教育の恵泉女学園の創設者が原作のタイトルです。

なのに、なぜだか恵泉の創設者の愛弟子とフェラーズ準将の恋愛エピソードが映画には創作として盛り込まれていて、兵士ではない実在の一般の人物をフィクションとして入れちゃうのって?…一つ目の疑問符。

それを抜きにして、ストーリーや演技を観れば、丁寧な作りだし、娯楽映画としては面白い。しかし、自分の国の非常にデリケートな部分を美化はいいとしても、外国が作った上に恋愛エピソードを入れちゃう感覚が理解できないです。それも2012年になぜ?って思う。何か映画化、しかも娯楽映画にするきっかけがあったのだろうか。

タブーを映画化した画期的な作品として評価されているそうですが、原作をノンフィクションに依りたいなら、他にもありそう。というのは、原作者の岡本氏は上梓した翌2003年に亡くなっているから。映画制作する上で原作者と確認を取れない状況で映画化するって理解できないです。著作権を持っている遺族が了承したとしても、デリケートな事実の裏が取れないのに。映画化ってこんないい加減な世界なんだろうか…二つ目の疑問符。

ブロードウェイでミュージカル「ミス・サイゴン」を観た時、拍手喝采のアメリカ人の中で一人怒ったことを思い出しました。ベトナム人観たらきっと怒るなと思いました。ベトナム戦争を感動的な娯楽化する神経がわからなかったです。

そこまでは怒っていないけれど、日本人が制作できないタブーを作るなら、恋愛エピソードは入れないでほしい。それ以外は堅いのに。ミスサイゴンもそうだけど、恋愛という別の感情でオブラートにくるんで感情の行き場を曖昧にさせられた感じでした。

私が日本人でなければ、そんな感情抜きにエンペラーの感動話で、万歳と言いそうでした。

トミー・リー・ジョーンズがマッカーサー役、片岡孝太郎(片岡仁左衛門の息子)が天皇役。なぜこの人選かと思ったら、実年齢が当時と一緒でした。マッカーサーは66歳、天皇は44歳。不思議なことに私はこの年齢に反応しました。

私の知っている昭和天皇は今上天皇のおじいちゃんの印象が強かったのですが、44歳という、一般人でいえばまだ若く、人生のいちばん油の乗った、働き盛りの年齢と、野望をまだ残した熟練の66歳のマッカーサーに一人の人間としての歴史を感じました。映画ですが、実際の写真も含め、神格を否定したから、心ある一人の決断力ある人間に見えました。そう見える映画でしたからアメリカでは非難されたのでしょう。

原作も史実と違うことが近年わかったそうです。
史実と異なると言われているのは、日系二世が諜報部員として活躍していたATISという組織があり、フェラーズ準将の力ではないこと等々。

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