ーcoyolyー

終戦のエンペラーのーcoyolyーのレビュー・感想・評価

終戦のエンペラー(2012年製作の映画)
3.5
火野正平。火野正平演じた東條英機が白眉。東條英機にしてもアドルフ・アイヒマンにしても平時だったら優秀な官吏として平穏に生を全うできた人なんだろうなと思う。ただ不器用で運が悪かった。立ち回りが上手くないから誰かを悪者にしなければ腹の虫がおさまらない群衆とそういうものをコントロールしなければならない統治者によってただの小役人が極悪な戦犯なんだと仕立て上げられてしまった。スケープゴートに丁度良かった。上からの命令に反抗しない生き様を貫いたから。この人たちに罪をなすりつけた本当の戦犯というものがいることは忘れてはならない。

天皇制についてはアメリカ人が理解することなんて到底無理だろうによくこの企画通ったなと思う。だって日本人だって理解してない。上手く言語化されないままそれは内面化されている。言語化できないものを他者が理解するのは難しいだろう。王権神授説ではない、だって天皇そのものが神だから、というのは王権神授説ですら理解が怪しいアメリカ人に分からせようとするのは無理ゲーにも程がある。でもこれ逆に王室を持つ国だったらここまで存在が意味不明であると解せず自国の王室の文脈当てはめて解体して酷い目に遭ってたような気もするから分からないことを分からないとは理解できていたアメリカに統治されたのは幸運なことのようにも思う。だってイラクとかイスラム教国に対しては同じアブラハムの宗教の国だからどこかまだ「分かる」という感覚が神道に比べるとあると思うんだよ。神道と天皇制分からなすぎて結果「触らぬ神に祟りなし」的な態度になったの賢明だと思うわ。

いくらラブストーリーを絡めたところでなんとも歯切れが悪く、歯切れが悪くならざるを得ない題材で完成まで漕ぎ着けたところが何より偉いので、制作陣のことは労いたい。何より火野正平。自転車漕いでない役者としての火野正平の魅力を知れたことが儲けもんだったのでそれだけでも良しとできます。
ーcoyolyー

ーcoyolyー