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モネ・ゲームの東京キネマのネタバレレビュー・内容・結末

モネ・ゲーム(2012年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

原題の「GAMBIT」はチェスの捨て駒戦術の意。ただし、これは思い付きの捨て駒じゃなく、定石のパターンがあるらしい。っつうことは、オーソドックスなどんでん返し、引っかけ映画ですよ、というサインを最初から出している訳で、さあお手並み拝見しますという態で観客は見始めることになります。

この題名で英語圏の人たちはコンゲーム・コメディというのがピンとくるはずで、オープニングはピンクパンサー風の追っかけアニメ、開巻からのドラマもちょっとブレイク・エドワーズなんで、こりゃ外れだなあ、と直観。どうせ「積みわら」のオリジナルは、実はテキサス娘の自宅から見つかりましたあたりのオチでお茶濁しなんだろうなあ、とタカをくくって見てたのだけど、なんか細かいところの演出が光ってます。コーエン兄弟のように暴走することもなく、抑えめでありながら、ニヤッとくる場面のうまいこと。

途中、ステレオタイプ化された日本人ビジネスマンが案の定登場したりもするので、やっぱりダメなのか、なんて行ったり来たりはしてたのだけど、終わってみると、この日本人も引っかけの一部だったというのが解るので、まあ許してあげることにしましょう。

ラストは、私の想像とは全く違っていて、というよりも、想像通りだったら嫌だなあを見事に裏切ってくれたんで、非常に満足。欲ボケの拝金主義者を日米英の連合軍が粉砕するという文脈がいいし、金儲けの話に振らずにシャレが効いてます。

メディア王の嫌ったらしいジャバンダーをアラン・リックマンが好演、むっつり三流美術鑑定士のコリン・ファースも活き活きと演技してます。キャメロン・ディアスだけはミス・キャストだとは思うけど(アップになると50歳にしか見えない)、往年のコメディ映画全盛の頃の感覚を彷彿とさせてくれる良作です。

後で解ったことだけど、この映画は『泥棒貴族』(1966年)のリメーク、DVDにもなっていないんで現在では見ることができません。監督はロナルド・ニーム、主演はシャーリー・マクレーンとマイケル・ケインだから、面白くない訳はないと思うんだけどなあ・・・。

それに本作に関しても、あのヒドい予告編(これをエロコメで売ろうとするのはどう考えても阿呆でしょう)じゃあ食指が動きません。これだけネット革命だ、流通革命だなんていっても映画産業はまだまだリエンジニアリングが足りないようで・・・。
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