かじドゥンドゥン

孤独な天使たちのかじドゥンドゥンのレビュー・感想・評価

孤独な天使たち(2012年製作の映画)
3.4
引き籠もりがちで親から心配され過保護に育ったロレンツォ14歳は、学校のスキー合宿に参加すると言って親を喜ばせて置きながら、実はアパートの地下室(ロレンツォの家族が物置代わりに借りている)で寝泊まりし、一人の時間を満喫。

ところがその地下室にある自分の荷物を取りに来たのが、窃盗で捕まった後ようやく出所してきた異母姉オリヴィア。彼女は行く宛てがないといって強引にこの隠れ家に居座りロレンツォを苛立たせるが、再起するためのヤク断ちにもがき苦しんでいる彼女を見ているうちに、ロレンツォは彼女を助けたいと思う。

妾の娘でヤクに溺れた女と、完全に自分の世界に引きこもって完結してしまっている少年との、奇妙な同居。禁断症状で錯乱して当たり散らすオリヴィアに、ついロレンツォは反撃してしまうが、そうやって人を傷つけたとき、彼ははじめてひとの痛みを、あるいは痛みを通じて「他人」を、知る。

BGMの使い方が面白い。前半は、ロレンツォがヘッドフォンをして聞き始めた音楽がBGMとして流れる。これは周囲のセリフをかき消すような、BGMとして大きすぎる音量。これによって視聴者は、ロレンツォの自閉した世界と、聴覚的に同期させられる。

ところが終盤、最後の夜に流れる音楽は、オリヴィアとロレンツォが抱き合い踊りながら「共に」聴く。BGMの(歌詞や曲調だけでなく)使い方自体が、物語の構成要素になっている。なお、この原題は「私と君」。(あえて「僕」とは訳さない。なぜなら、ロレンツォとオリヴィアの双方向的な関係だから。)ジャケットの写真は、二人が同じ方向を見ている。しかしこのシーンで二人は、今後クスリは辞めることと、今後こうやって隠れない逃げないことを互いに誓い合い、向きあって手を握り合って眠りにつく。