ちろる

孤独な天使たちのちろるのレビュー・感想・評価

孤独な天使たち(2012年製作の映画)
3.8
殆どのシーンが薄暗い地下室で繰り広げられる、義姉との秘密の数日間の物語。

学校に行っても誰にも馴染めない、外部の雑音をなるべく遮断してなんとか生きている壊れそうな主人公の14歳の少年が親に黙って地下室に籠り、好きな音楽と本だけに囲まれた自分だけの秘密の一週間を過ごすはずだったのに、その奔放な義姉が潜り込んでくる。

同じくベルトリッチ監督が描いた一卵性双生児の近親相姦的な世界観を描いた「ドリーマーズ」とついつい比べてしまうけど、彼方よりは瑞々しい青春ドラマとしての雰囲気を保っている。
正直いうと、蜜やかな雰囲気が無い分少し単調であっと驚くようなドラマティックな展開が待っているわけでは無いけれど、さすがどんな作品でも心に刻むような美しい映像美を残すベルトリッチ、ラストにデイビッド ボウイの“Space Oddity”に乗せて姉弟が踊るシーンは2人の孤独の解放と、成長を感じさせる、何とも言えない胸を打つシーンとなっている。
そして、結果的に主人公たちの境遇に共感していたわけでも、ストーリーが好きなわけでも無いのにいい映画だったかも・・・と、何となく言いたくなってしまう作りになっていた。
主人公が特に美少年では無くニキビ面のコンプレックスがありそうな容姿だっただけに、内気な友達も少ない少年という部分に尚更リアリティを増していた。
彼のこの小さな解放や成長がすぐに彼の世界を大きく変化させるに至らないかもしれないけれど、その変化した事実が彼の人生で大きな役割を果たす日が来るのだろう。
老いて身体も思うように動かないベルトリッチ監督が描いたこの作品の台詞たちが、自分の世界だけに閉じ込められた現代の若者たちにほんの少しだけだけでも響くことがあればいいなとも思う。
ちろる

ちろる