kkkのk太郎

タイガー 伝説のスパイのkkkのk太郎のネタバレレビュー・内容・結末

タイガー 伝説のスパイ(2012年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

インドの諜報機関”RAW”のエージェントたちの活躍を描くスパイアクション・フランチャイズ「YRFスパイ・ユニバース」の第1作目にして、RAWの凄腕スパイ・タイガーが命懸けのミッションに挑む『タイガー』シリーズの第1作。

とある任務のためダブリンへと送られたRAWの諜報員タイガーは、そこで女学生ゾヤと運命的な出逢いを果たす。次第に惹かれ合う2人だったが、パキスタンの諜報機関”ISI”のエージェントがタイガーを襲う…。

イギリスにはジェームズ・ボンドが、アメリカにはイーサン・ハントが、そしてインドにはこの男がいる!
彼の名はタイガーッッ!!任務の度毎に死体の山を築く、ちょっぴり恋に奥手なナイスガイなマッチョマンである🐯

マーベル映画の成功を受け、多くの映画会社が独自のシェアード・ユニバースを作り上げようと躍起になっていた時代が一昔前にあった訳だが、映画の都ボリウッドにもそのムーブメントは届いていたようだ。
インド最大の映画会社の一つ「ヤシュ・ラージ・フィルムズ(YRF)」は、実在する諜報機関RAWのエージェントを主役にした映画を複数制作し、その主人公たちをクロスオーバーさせるという企画を計画。その第1弾が本作『タイガー 伝説のスパイ』(2012)なのです。
とはいえ、壮大なプロジェクトである「YRFスパイ・ユニバース」、実はこの第1作を公開した時点ではそんな構想は存在していなかったらしい。『タイガー』シリーズを2本作り終えた段階で、「これすげーヒットしてるし、もしかしてユニバース化出来るんじゃね?」とお偉いさんが判断。直接の繋がりはないものの同じ世界観を共有しているシリーズ第3作『WAR ウォー‼︎』(2019)を経て、第4作目『PATHAAN/パターン』(2023)で本格的にユニバースが始動し始めた、とこういう流れのようです。まぁまだこの1作目しか観ていないから詳しい事はわからないだけど。おいおいちゃんと追いかけていきたいと思います。

監督はカビール・カーン、主演はサルマン・カーン。この2人は同じ座組で『バジュランギおじさんと、小さな迷子』(2015)という映画を後に制作する事になる。まぁこれが死ぬほど泣けるめちゃくちゃ良い映画で、インド人だけでなく日本人もびっくりすることになったのは記憶に新しい。
本作と『バジュおじ』に共通しているのは、インドとパキスタン、政治的難局にあるこの2国間の友好への願い。カビール監督とサルマン・カーンは、国家に引き裂かれる2人が困難に直面しながらもそれを乗り越え、最後には固い絆を結ぶという物語を共に作り続けているのだ。
こういった政治的メッセージをエンタメ映画という形で世に送り出し、そしてそれを大ヒットさせられるクリエイターというのは本当に貴重だしとても立派。彼らの映画を観て感動した子供達が、将来印パの関係改善に向けて尽力するかも知れない。そういう可能性の種を蒔くという行為こそがフィクションの存在意義であると思うし、それを実行する彼らに最大級の敬意を表したい🫡

内容としては、ザ・ボリウッドといった具合にエンタメ要素がてんこ盛り。アクション、ラブコメ、カーチェイスに歌にダンスに…。2時間12分というインド映画としてはかなり短いランタイムの中に、お楽しみ要素がこれでもかと詰め込まれている。いやぁもうお腹いっぱいです。

前半は完全にラブコメディ。一流スパイなのに恋に奥手という、ボンドやイーサンの真逆を行くかのような中年男と、この世のものとは思えない絶世の美女との可愛らしい恋模様が描かれる。インド映画お決まりのダンスシーンに「お前さっき踊ってけどあれ何!?」というメタ的なツッコミが入ったりもするし、全くスパイ映画らしさのない明るい物語となっています。
しかし後半、ゾヤの正体が判明するあたりから映画のカラーが180°転換。『ボーン』シリーズ(2002〜)もかくやというハードボイルドな逃避行が繰り広げられる。
ラブコメとハードボイルド、一粒で二度美味しいという見方も出来るのだが、前半と後半のタイガーが同一人物だとはどうしたって思えない。ギャップ萌えとかそういう範疇を超えてんよー。マジになったタイガーはヤバいゼ…、という事なんだろうけど、それならお前最初からマジになっとけよ!!ダブリンのミッション力抜きすぎだろっ!∑(゚Д゚)

本作のユニークなところではあるし、この点には目を瞑るとしても、肝心のアクションシーンに見せ場がないというのは流石に頂けない。そもそもスパイ映画らしいアクションが冒頭と中盤、そして終盤の3箇所しかないというのは少々肩透かしだし、そのアクション描写もヌルい。スタントマンの使い方が露骨すぎて緊張感がない。しかもカメラのブレかたがかなり酷く、何をやっているのか分かりづらい上にかなり酔う。やはりカメラワークには安定感が欲しいものである。

決して退屈はしなかったのだが、見どころも特になかったというのが本作の総評である。ラージャマウリ監督ばりのアクションを期待していたこちらにも落ち度はあるとは思うが、やはりスパイ映画なのだから目を目張るような特大アクションシーンは用意しておいて欲しかった。サルマン・カーンはジャケットの上からでもわかるほどの隆々とした筋肉の持ち主。着替えシーンでの裸体には度肝を抜かれた。なんじゃこの筋肉!?彼の筋肉をフル活用すれば、すごいアクションを撮れそうなものなのに。いやはやなんとも勿体無い。

そういえば、こういう映画には悪の親玉がつきものだと思うのだが、本作には全く登場しなかった。そのあたりは次作に登場したりするのかしらん?という訳で、次も観まーす👀
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