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セデック・バレ 第一部 太陽旗のshinkariのレビュー・感想・評価

5.0
植民地期台湾社会の切り取り方が巧みな作品。
警察として植民地内で地位を獲得した先住民のアイデンティティをめぐる葛藤(伝統的な風習に対する懐疑)なども描かれており、日本の支配の性格を一面で片付けないいわゆる「近代性論」的な視点を有している。
また日本人の描き方も上手いと思った。全員が全員露骨に民族差別を発露していたわけではないことを示しつつも、先住民に対する差別が日本人の間に強固に根付いていたこともはっきりと突きつけるようにつくられている。わずかな言及だが、セデック族のリーダーであるモーナ・ルダオが日本(「内地」)よりも台湾にいる日本人の方が差別をしてくるといった旨の発言をしていたのは個人的に印象深い。距離が近いほど逆に日本人側が差別を維持しなければならなかったという植民地下の構図が随所で読み取れる。
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