bluebirdinger

エメランスの扉/家政婦の秘密のbluebirdingerのレビュー・感想・評価

5.0
結末を知りたくて早く読み進める小説ではなく、
時間をかけて読み進めていき、読み終えた後も問いかけられたことを考え続けてしまう小説のような映画。

物語が進むごとに、
驚きではなく僅かな発見や納得があり、
また進んでいくと、
解答ではなく垣間見える何かに自分との対話が始まる。


ヘレン・ミレンに突然興味が湧いて観た映画。
主人公の家政婦エメランスとしてずっと生きてきたかのような表情や雰囲気、言葉遣いや全て。
彼女自身の気配や表情は微塵も感じられず、
素晴らしい役者だと、今さらながら知った。


エメランスの偏屈で傲慢で厳しく表面的には何一つ優しさが見えてこない人間が、なぜあれだけ愛されるのか?
正論ではない答えや優しさや愛の在り方を時折話してくれる。そして映画の最後のシーンまで語り続け、人々の愛と感謝が映し出される。

エメランスについて考えることは、
彼女の生き方だけではなく、自分の生き方をも考えること。

未だに、時間が経つほどに、
この映画の素晴らしさとエメランスの生き方が、とても深い場所で私を揺さぶる。
この台詞が、私に問いかける。

「彼女は愛して 救った
私は愛して 殺した
どういうことかしら」

とても豊かな映画でした。
監督・役者ともにもっと観たい。
bluebirdinger

bluebirdinger