KO

ポゼッションのKOのネタバレレビュー・内容・結末

ポゼッション(2012年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

 突然だが、ネットで怖い話を読んだことはあるだろうか?私は大学3年の夏休み前に初めて読んだ。4年になってまで単位を取るために授業に出たくなかったので、寮の自室に篭り、「テレビや映画、ゲームに興じない。テスト勉強をする。」と意気込んだ私はネットで怪談を読み漁っていた。
 カーテンが日差しを遮り、薄暗くなった静かな自室。肌寒い冷房の風。寮内から聞こえて来る物音や叫び声、そして悲鳴。怪談を楽しむ環境としては最高だったが、話自体はあまり覚えていない。しかし、話の内容はよく覚えている。
 なぜ覚えているのかと言うと「小さい子供や学生が田舎や人気のない場所(暗い時間帯が多い)に行く→霊的な何かを見つける→取り憑かれる→問題が起きる→(医学では解決できない)→神主やお坊さんに解決してもらう」という流れが多かったからだ。
 この映画はアメリカが舞台であるにも関わらず、不思議なことに話の流れがネットに溢れている怖い話と概ね同じなのだ。異なる文化圏でもこんなに同じようなものに恐怖を感じるのかと驚いてしまった。それにユダヤ教がモチーフとされていることも新鮮で面白かった。
 また、ネットの怖い話では表現し難い視覚的なディテールはとても不気味であった。MRIでの悪魔に取り憑かれている様子や蛾に溢れた部屋、攻撃的な娘、俗世から隔絶されたようなラビはネットで文章で表現するのは難しいだろう。
 では他のところはどうかと言うとネットの怪談のようにサクサクと読めるわけではないので間延びしている感じが気になってしまう。観ている時間に「アメリカの家は立派だし、家具屋のショールームみたいに綺麗だ。さて、次は何が起きるのかな?」と何度思ったか分からない。居酒屋で次の飲み物が運ばれて来るまで、氷水で薄くなった飲み物を虚無の目でちびちび飲みながら店員さんの気配に期待してしまう時間のようだ。簡潔に言えばやたら長く感じてしまう。この点ではネットの怪談に軍配が上がる。
 長々と書いてしまったが、ネットで怪談を読むのが好きな人であるなら興味深いと思えるのではないだろうか。
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