emily

幸福の罪のemilyのレビュー・感想・評価

幸福の罪(2011年製作の映画)
3.7
幸せな家族の風景。しかし信頼の厚いリハビリ医が患者で14歳の少女との淫行で逮捕されてしまう。その捜査を担当することになったのが、リハビリ医に妻を寝取られてしまった元夫である。二人の間には障害のある子供がいて、元夫が引き取っている。複雑に絡み合う家族の関係、それぞれの罪が徐々に浮き彫りになっていく。

 きらびやかな光が自然を取り囲み、小声での会話、病院での子供達と家族のそれぞれのルーティンを足早に描写していく。時折繊細な質感や、メランコリックなギターポップが意味深に寄り添い、室内灯の幻想感から、刑務所や病院の現実的な光へと切り替えていく。車のフロントガラス越しに見える移り行く景色の中に浮かぶ人物の横顔、幸せそうな家族の表情の奥に、それぞれが抱える悩みや罪をしっかり交差させていく。

 ストーリー展開はゆっくりと流れるように見せて、非常に濃密で、たゆたうようにしかし確実に物語は展開していく。周りを固める人物像達、それぞれの仕事もしっかり描写し、絡み合うようで絡み合わず、ゆっくりと流れる時間に突如降りかかる不幸に、アクシデント感をあまり感じさせない演出がいい。リハビリ医は冤罪に見えながらも、どこかロリコン臭を漂わせ、終盤には彼の罪がしっかりと浮き彫りになってくる。シュールすぎる展開を真面目に描写し、その先に”何か”を常に漂わせる空気感は、寄り添う色彩や音楽、自然の映像美が見事に作り上げている。

 最後に見えてくる妻の妹リダの人生。それぞれが無意識のところで罪を作り、それが家族の間でしっかり交差している。誰が正しい訳でも、誰が一番悪い訳でもなく、ただ人間なるもの誰しも罪を犯してる。大事なのはそれに早く気が付き、償う事であるが。その償いが自己満足であってはならない。自分の気持ちを楽にするものであっては意味がないのだ。幸せになるために冒す罪。罪の上に成り立つ幸せ。そうしてその代償は後から必ずついてくる・・
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