『その男、凶暴につき』
めっちゃ素晴らしいです。
ほとんど完璧な映画!
レフン監督とは「ネオン・デーモン」を観てしばらく疎遠にしていたのだけれどようやくヨリを戻せた。嬉しい。
取り敢えずトム・ハーディが心底楽しそうだったのでそこだけでも100点
静謐で高級、芸術的な映像表現や音楽選択に対し、実際に映っているものは小汚い刑務所や精神病院の様子、その上にトム・ハーディーの濁声が乗っかることで非常にアンビバレンスな体験となる。
そしてその体験が、そのままブロンソンの内面へと我々を導く。
彼にとって暴力とは高尚であり低俗でもある。日課であり自己表現でもある。芸術であり娯楽でもある。支離滅裂であるがそれが彼の生きがいであり、少なくとも身に染みついて離れないものなのだ。
ラストシーンにおいて野獣のようになった彼の姿は人誰しもの持つ生きがいの行き着く先であり、肯定のようにも感じられた。
剥き出しの本能。
非常に面白いのは度合いが違うだけで我々にとっても「生きがい」の捉え方はブロンソンのそれとそこまで変わっていないのではないか、と言う点にある。
事実、少なくとも私は映画を高尚なようにも低俗なようにも芸術のようにも娯楽のようにも感じている。
日課のようにコンテンツを浴びるがそうでないと堪えられない、紛れもなく自分を繋ぎ止めるものなのだ。
どこまでも支離滅裂な生きがいを持つ人間の物語であり、変態的でありながらどこまでも普遍的な映画だ。凄すぎる。
みんなブロンソンじゃん。