ヒダリー

ブロンソンのヒダリーのレビュー・感想・評価

ブロンソン(2008年製作の映画)
4.2
御前上等で最低最悪な生き様。
高級感溢れる画面、絵画の様に計算された俳優の配置、頻繁に流れるクラシック音楽。これらに皮肉に映る、きったねえ刑務所ときったねえ精神病院と暴力と筋肉、怒号。
静謐さと暴力性を併せ持っている、静と動のカタルシス。なるほろ〜これがあんびばれんすなのね〜。

マイケルの象徴は言うなればショットガン。近づくものはごっそり抉り取る様な超暴力。(本来は遠くの対象物を狙うものだが!)
対する刑務所(英国)は警棒。しかし彼を前にすればただ抑えつけるための棒切れ。
文字だけ見れば超絶極悪人なのだが、そんな暴力はマイケルにとってただの手段で、表現で生きがい。本能なのだ。もはや暴力と彼は不可分。ただそれに従う、その超野生的な人間性が放つ存在感が美しいと感じてしまった。

悪人と一言で形容したくないのは、彼の生き方が、生きがいに生かされてる自分達や、さまざまな表現者に通じてしまうものがあるからだろう。我々となんら変わらないのかも知れない。
誰かにとって映画を観ることは誰かにとっての絵を描くことで、誰かにとって暴力を振るうこと。そんなフィクショナルな存在がよくも現実に居たものだと少し興奮気味にもなってしまう。事実は小説よりも奇なり、とは言い得て妙。この社会の誰かの内に、確かに眠る危険性にアンビバレンスな気持ちになる。
本能、欲望やマッチョイズムについて描いたものかもと思うが、それ以前に凡庸な誰かの人生の物語だったとも思う。
ヒダリー

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