途中でやめようかと思った。
滅多にそんなことないんですよ。昔、映画館で見た『ヘンリー』、『コックと泥棒、その妻と愛人』、そんで『マーターズ』くらいかな?
基本的にヤバそうなのは避けているつもりなんですよ。
この映画は『ニトラム』の流れで見てしまったが、16歳(に見えないけど)のジェイミーがルックスも体格もいいのにやさしい、少し気弱な子で…それがいたたまれない。
けっこうダメなタイプの母親の新しい彼氏ジョンが、パッと見は柔和なおじさんって感じなのに、中身はサディスティックなサイコパス野郎で本当にろくでもない。気弱な少年を、男らしさや巧みな言葉&ガチの暴力で支配し、服従させる。有害な男らしさを煮詰めたような男だった。ヒゲや銃は男らしさの象徴だ。「男なら」「おとこだろ?」と囁いてジェイミーを洗脳していく。タチが悪すぎる。
児童に対する性暴力、ネグレクト、性的マイノリティや麻薬常用者への差別、私刑殺人…そして通底する貧困が波のようにたたみかけてきて、見てるだけのこっちまで心が削られていく。見事な胸くそ映画。
ほんとうにキツかった…
しかしこの監督、ジャスティン・カーゼルは有害な男らしさ(トキシック・マスキュリニティ)を描写してると見せかけて、男を産み陰に陽にコントロールする母親に対しても仄かな悪意を持って描写しているように思える。(ニトラムだけでは確信が持てなかった)
ジャスティン・カーゼル監督は危険だわ。覚えておかないとまた酷い目に遭いそう…