ひこくろ

プライズ〜秘密と嘘がくれたもの〜のひこくろのレビュー・感想・評価

4.1
子供の目線で描かれることで、軍事政権下の異常さがくっきりと浮かび上がっていると感じた。
世の中がどんな状況であれ、子供のやることには変わりがない。
興味を持ったことに手を出し、素直にそのままを楽しむ。
計算も駆け引きも打算もそこにはない。
セシリアのそんな姿はあまりにも生き生きとしていて、眩しいし可愛い。

でも、大人たちの社会は子供にそう生きることを許さない。
軍に対する批判を正直に書いたセシリアの作文は、書き直しをさせられる。
そして皮肉なことに、軍をほめたたえた噓の作文は表彰されることになってしまう。
自分に正直に生きていない。その思いは、知らず知らずのうちに彼女を歪めて追い込んでいく。
あんなに素直だった女の子が、だんだんと衝動的に、暴力的に変化していく。
その姿は、たとえようがないほどに痛々しい。

子供が子供らしく生きられない社会は、どう考えたって異常だ。
そんなことを感じさせる映画だった。
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