映画を観ている感覚が無くなる。
政府から身を隠しながら生きる母娘の日常をただただその横で見守っている感覚に陥ってしまう…。
あまりにも自然で、自分がただ単にそのシーンを覗き見ているようだ。
カメラから写し出される風景、母娘の会話や触れ合い、友達と遊ぶ姿、戯れる犬、学校での授業風景…。
これだけ作りものを感じさせない映画もなかなか無いだろう。
まるでホームビデオで家族の日常を撮ったような、嘘偽りのない世界がそこに本当に存在しているかのようだ。
ただ、これは映画であり、いわゆる作りもので、その実状は役者さん達が演技し、カメラマンが撮影し、監督が作品化した自然ではない人工物である。
これは驚きでしかない。
役者さん達の演技(若い軍人の演技は？だが)、犬の動き、カメラワーク、セット感のない家や学校…、特に主人公のセシリア役の演技は凄かった。
まるで心の中に溢れる感情が手に取るように分かる。
これだけの風景に触れられる映画はあまり無い。
まだまだ幼いセシリアが、本音で生きられない、自分を隠しながら生きなきゃいけない現実を涙ながらに噛みしめる姿を描き出したラストも最高！
是非観ることをオススメしたい秀作。
