ピュンピュン丸

プライズ〜秘密と嘘がくれたもの〜のピュンピュン丸のレビュー・感想・評価

4.5
軍事政権下のアルゼンチン。反体制側と目される父を失った母娘の、人目を避ける生活が描かれている。

『学校』 というものの本質が、権力の側からみると、洗脳と統治の出先機関にすぎないことが、この映画を見るとよくわかる。

軍事政権から自分と娘を守らなければならない母親の難しい立場と壊れそうな心が、海岸べりの壊れそうな掘建て小屋に象徴されている。

母は生きるために娘の行動を制御しようとするが、娘は、内から外へと社会的な関わりを広げようとする段階に成長しつつある。学校に行くことを決めた時点で、娘の成長はそのまま母娘の危険につながるのだ。

娘の無邪気さとは裏腹に、母の苦悩は計り知れない。先生の言うがままに、夫を奪った軍事政権を讃える作文を書いて表彰される娘。そして、そのことが決定的に、自分たちの身を危険にさらすこととなる予感と不安。それらもろもろが、どんよりとした砂浜の、大きく広がる映像に象徴的に映し出されている秀作だ。

少女の演技は素晴らしい。先生も良かった。家で、母娘がじゃれあう光景が好きだなぁ。

テイストは『ミツバチのささやき』に似てると感じた。邦題は、改善の余地あり。