このレビューはネタバレを含みます
「大人の恋には嘘がある」を撮った女流監督の作品です。この映画の女性の描き方、そしてなにより心理描写のきめ細かさ(例えば、メリッサが夫に対しちょっと下ネタっぽいことを話すと、ケーキを取るために(ふりをして)ケイトが席から立つシーン。だとか)からしても、女性監督が撮った映画なんだなということがすごく感じられる作品だと思いました。
この映画、テーマを一言で言うと「善良な人とは?」ということだと思う。レベッカ・ホール演じるレベッカは人付き合いが不器用で、あんまり幸福そうには見えないけど、とても善良な生き方をしている素晴らしい女性だと思う。観ていてとても好感が持てる人でした。
対照的なのは姉のメリッサ。祖母のことなど全く関心がないし、子供っぽく、自分自身の事しか考えていないタイプ。
この映画で一番重要な役だったと思うのは、キャサリン・キーナー演じるケイト。死んだ老人が使っていた家具を安く買収し、高値で売るというインテリアショップを経営していて、最初は満足そう。でも次第に、じつはそういったビジネスをすることに密かに罪悪感を感じていたことが明らかになってくる。そうなると、ケイトが前半からホームレスに対しかなり押しつけがましく援助していた本当の理由もつかめてきます。
まるで偽善者のようにみえていたけど、実は罪悪感からの行動だったと。
最初は仲悪そうだったケイトとレベッカの間に最後は友情が生まれて終わる。それは、レベッカがケイトは善良な人であると感じ取れたからだと思う。このケイトの変化こそ、この映画の一番描きたかった「善良な人とは」ということだと思う。結局は、自分自身の日頃の行いを自分自身で見つめなおしてみるという事が大切なんだろうと感じる作品でした。
地味だけど、面白かったし、登場人物の表向きの感情だけでなく、内面的な感情までかなり気を配っているすごく丁寧に撮られた映画だと思いました。個人的に、女性監督の映画はそういう作品が多いと思うので好きになることが多いです。
とても良い映画だと思います。