爆裂BOX

人喰いトンネル MANEATER-TUNNELの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

3.8
7年前に夫ダニエルが失踪し、捜査を担当した刑事と恋仲になり彼の子供を身籠ったトリシア。そんなある日、妹のキャシーは近所のトンネルで痩せ細った男と出会い…というストーリー。
ヒドイ邦題つけられてますが、「ドクタースリープ」の俊英マイク・フラナガン監督のデビュー作で都市伝説を題材にしたサスペンス・ホラーです。トンネルと言っても高架下にある歩行者用の小さなトンネルですね。
全体的に薄気味悪い雰囲気に包まれた作品でした。前半は再出発を決めた姉とそれを支える元ジャンキーの妹の生活が描かれ、その合間に姉が失踪した夫の幻覚を見ますが、この幻覚の描写がJホラー風味の不気味さでした。後半で寝に行こうとした姉妹が何かの音を聞いて電気を消して真っ暗になった室内をじっと見るシーンの気味悪さとジワジワ緊張感が高まってくる感じは怖かったですね。怪異の中心場所といえるトンネルの薄気味悪さも中々の物です。後半、キャリーが「交換」を持ちかけた時に悲鳴と共にポッポとトンネルの壁に手形や顔が浮かび上がる演出も不気味でした。近所に貼られた行方不明のペットの捜索願のビラ等地味ながらゾクリとくる描写が多いです。
ただ、雰囲気描写が先行して話が中々進まないのでダルイと感じられる方も多いと思います。前半は上記にあるように姉妹の生活が中心なので。夫が突然帰還してからの後半は話がどんどん進んでいきますが。
また、姉妹のどちらが主役なのかイマイチ分り辛いです。最初は姉の方かと思ったんですけどね。
オチも投げっぱなしで具体的な説明など殆どされないので、説明不足と感じられて嫌いな人も多いでしょう。キャリーが姉に薦めて、帰ってきたダニエルが夜中に読んでいた絵本「三匹のやぎのがらがらどん」が本作のプロットとなっているようで、そこからある程度は想像できるかもしれません。家の近所のいつも通ってる道にある薄暗くも不気味な雰囲気でもない場所にもしかしたら「彼方側」への入り口があり、そこに棲むモノが引きずり込もうと待ち構えているかもしれないという発想は不気味で怖くて良いですね。ただ、無暗にそれを肯定するんじゃなく、姉や付き合っていた刑事が最後に語る様に残された者たちはいなくなった人たちがいなくなった現実的な理由考えて何とか折り合いつけようとしながらも「でも、もしかしたら…」とボカシて見せる所も良いですね。
物語には関係ないですが、仏教徒の姉が禅を組んで線香に火をつけて瞑想する隣の部屋でクリスチャンの妹が十字架に祈りを捧げていたり、姉の部屋のクローゼットに「火」「水」「土」という漢字のロゴが入っているシュールな描写は面白いです。
個人的には楽しめましたが、所謂雰囲気映画なのでそういう映画が好みなら見てもいいのではないでしょうか。