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パパの木のodyssのレビュー・感想・評価

パパの木(2010年製作の映画)
2.5
【前半はよかったけど】

最初のあたりはなかなか面白い映画です。

まず、大型トラックで一軒家を丸ごと運搬するシーンに驚かされます。一軒家ですから幅は道路幅を大幅に超過していますが、道路の脇には建物もなければ電柱もないので、運べてしまう。オーストラリアならではのスケール感、あるいは大ざっぱ感が楽しめます。

それからこの映画のタイトルにもなっている樹木。大きく枝を張って、根も四方八方に伸びており、一方で近くの住宅にとっては破壊の要因となるわけですが、他方でこの映画で描かれているように子供の遊び場として恰好。

それから、6歳の女の子役で出ているモルガナ・ディヴィスが可愛く、なおかつ名演を見せてくれます。

というようなところまではなかなかいいのですが、残念なことに後半が駄目。夫を亡くして4人の子供を抱える未亡人(シャーロット・ゲンズブール)が、求職の過程で知り合った男と仲良くなっていくのですが、6歳の娘はこれに反発。また大きな樹木がパパの木だとして、切り倒すのに猛反対。母は、新しくできた男の勧めもあって切り倒すことに決めるのですが、娘は木から下りずストライキ。

ここで、母がなぜかあっさり意志を翻してしまう。おまけに新しい男に対してそれまでと180度違う冷たい態度をとる。見ていて、全然納得できませんでした。念のため言っておけば、新しい男は決して悪い人間ではないし、樹木を切り倒さなければ家が壊れるという彼の判断は、映画を見ている限りその通りというしかない。

ここら辺、大人の観客からすると脚本のお粗末さが露呈しているところなんですよね。一番の被害者は新しい男で、身勝手女である未亡人に振り回されたといったところ。でも、ラストでは二人はフレンドリーに別れている。身勝手女に対する批判的な視点が全然ないのは、失礼ながら女性監督の限界かな、と思いました。
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