Uえい

ジェーン・バーキンのサーカス・ストーリーのUえいのレビュー・感想・評価

3.5
リヴェットの闘病中に製作され、悲しくも遺作になってしまった。しかし、リヴェットの演劇などの主題は変わらず、力強い作品だった。原題は富嶽三十六景をオマージュしており、直訳だと「ピク・サン・ルー三十六景」といったところ。

とあるサーカス一座を巡る話が描かれている。主人公ケイトは父の死をきっかけに15年ぶりにサーカス団の元へ戻ってきていた。演目中の事故死で恋人を失った挙句、父親に勘当されてしまっていたのだった。

ケイトは道中、車がエンストしてしまい、ヴィットリオという男に助けられた。そして男をサーカスの公演に招待した。ヴィットリオはピエロの演目に大いに笑い、すっかり居着いてしまった。

そんな中、ケイトは仕事の関係でパリに戻らなくてはならなくなった。ヴィットリオはケイトの過去を知り、トラウマを解消するある秘策を思いつくのだった。

外から来て中に入り込めないという構造の入れ子になっているのが面白い。ヴィットリオとケイト、ケイトとサーカス一座、サーカスと公演する町など。そして、映画という興行の観客と映像も同じ構造と言えるかもしれない。

そして、恋人が事故死した演目をケイトが演じるというのも、入り込めないという構造を打破する行為になっている。提案したヴィットリオもピエロを演じていて同様に入り込む。今までリヴェットは映画内の演劇を扱うことが多かったけど、サーカスの演目だと単体でも楽しめる要素が有るので馴染みやすかった。

最後にカメラに向かって次々にサーカスの小屋から出てきて会話し合うシーンが凄く好きだった。あと、ジェーン・バーキン当時63歳らしいけどすらっとしていて全然そうは見えなくてカッコいい。
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