Meisu

きっと、うまくいくのMeisuのレビュー・感想・評価

きっと、うまくいく(2009年製作の映画)
4.8
面白い。これは面白い。インド映画自体そもそも初めてなんだけれど(だからインド映画はよく踊るとかそういった浅い知識しかない)、評判が良いのもうなずける。

英題は“3 Idiots(三馬鹿)”とあるようにエリート理系大学に通う救いようのない3人の大学生がくだらないトラブルを巻き起こしながら勉強に友情に恋を全力で楽しむ過去パートと、彼らの1人ランチョーの行方を追う現在パートが交互に繰り返されながら、ランチョー失踪の真実が明かされるミステリー仕立てになっている。
(以下ネタバレ含みます)

ミステリーとは言ったもののメインは怠惰な大学生のバカバカしい話であって、これが非常に面白い。コミカルなサントラに、忘れた頃に訪れる妙に耳に残るミュージカルパートがアクセントになっていてクスッと笑ってしまう。また構成としても細かく山場を作りながら全体としても起承転結がしっかりしていて、前半の伏線や振りをきちっと要所要所で回収していくのはディズニーやピクサーのそれに近いとも感じた。
エンジニアを養成する大学というところもきちんとフリになっていて、終盤の出産シーンは機械いじりが得意な彼らの持ち味が存分に現れた総力戦になっており、彼らのスキルが競争のためではなく命のために使われるという綺麗な話であった。

しかしそう言った馬鹿話の根底には現在のインドが激しい競争社会、そして格差社会であるという現実がある。3人もそれぞれ貧困層、中間層、超富裕層出身(ワケありだけれど)と出自が異なるが故に対立もするし、抱えている家族からの期待やプレッシャーのリアルさは日本のお受験なんか比ではない。幼い頃から将来の道筋を決められ言われるがままに勉強に捧げてきた学生、そしてそういった社会システムを象徴する存在として「競争して生き残ることこそ全て」と主張する学長に対して、好きなことに情熱を捧げ今を生きるランチョーの言動が突き刺さる。この辺のエリート志向の競争社会で若者が苦悩する(そしてその親も葛藤する)というのは日本や韓国に限らずどこにでもある。ただ社会に上手く適応し競争に身を投じたチャトルも、彼なりの夢をきちんと叶えていることに逆説的な救いも感じ、そこも含めて嫌味なく自らの夢や生き方をどうしたいのか問うてくれる。そして悩んでどうしようもなくなった時の魔法の言葉が「All is Well(うまくいく)」なのだろう。
Meisu

Meisu