takanoひねもすのたり

執行者のtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

執行者(2009年製作の映画)
3.0
新人刑務官オ・ジェギョン。
着任してしばらくの後、12年ぶりに死刑囚3名の死刑執行が決定した。
経験者は1人しかおらず、結果くじ引きで執行人を決めた。その5名の中に新人のオ刑務官が入っていた。

韓国は1997年の年末に23人の死刑囚へ刑を執行を以来、実際のところ死刑執行は行われていない。完全な死刑廃止ではなく現状は『死刑執行のモラトリアム(一時停止)』状態。

映画はそれをふまえたifの話。
死刑制度の是非を問いかけるものだと思うけれど、ドラマと詩情がやや過剰かな……と思う。

法律が人を殺すこと(処刑)を許可し、刑務官はそれを実行する。

長く務めるうちに死刑囚への同情や友情や憐憫を覚えてしまう刑務官がいる。

逆に犯罪者は犯罪者であり問題が起これば躊躇いなく制裁を与える刑務官もいる。

この作品、こじんまりと纏まっているのだけど、死刑執行に選抜された3名の罪と、それぞれの性質があまり描かれない。
ひとりは強盗殺人で3名殺害した罪で30年この刑務所で過ごすうちにすっかり穏やかな好々爺に。もうひとりは12人殺害した男で性格も行動もネジが飛んでるタイプ。
もうひとりは……忘れたw

更生をありとして死刑制度を否定するのか、
更生なしとして死刑制度を是とするのか、
刑務官目線では『誰もがやりたくないことを自分らが代行しなくてはならない』責務。

自ら望んだ死刑執行の立会になった刑務官は心身に不調をきたして錯乱してしまう。
死刑囚と穏やかに交流していた刑務官は退職し、新人で頼りなかったオ刑務官はこの体験を通して変わった。

これをみて死刑制度は野蛮と思うか必要と思うか考えろといっても難しいと思う。
感情に訴える(例えば刑務官の心理的負荷)方向だからで、市民感情や政治、犯罪者の更生と再犯の件数、刑務所の収容人数など、見えていない部分で考えなくてはいけない要素が抜けている。

また命の重さと殺人の対比に、オ刑務官が恋人から妊娠を告げられて産むか堕ろすか問われるという描写があるけれど、これは同列に考える話ではないので、不要な部分だったと思う。

刑務所物として悪くないけど全体的に隔靴掻痒って感じでした。