yksijoki

スタイルウォーズのyksijokiのレビュー・感想・評価

スタイルウォーズ(1983年製作の映画)
3.5
武蔵野館で流れる予告って全部面白そうだと思うんだけどあれはなんか魔法かなんかなのかな?笑

なんか見覚えがあるなと冒頭から思っていたが大学のヒップホップカルチャーに関する講義の中でみたやつだった。。そして満腹だったからドキュメンタリーは睡魔とのマッチ率が100%でした…。スヤスヤ。

冒頭の列車が暗いヤードから出てくる描写がとにかくカッコいい。合間合間に挟み込まれる列車の描写もとにかく良い。グラフィティの魅力がびちっと詰まっている感じがしたしとても良かった。あとは深夜にぞろぞろとヤードに侵入していく様とか、当時の映像じゃないとありえないリアリティがしっかりあって本当に貴重な映像作品だなというのを改めて痛感した。

シュガーヒルギャングのrappers delightかな?がちょいちょい掛かってやっぱりかっこいいし、あの独特のビート感とノリが70年代ヒップホップ黎明期、サウスブロンクスから来た新進気鋭の音楽という感じで稚拙な表現にはなるがバイブス上がった。もっとラップやボースティングにも触れようと思えば触れられる中でそこはあまり触れることをせずにしっかりグラフィティと公共材に絵を描くという行為に対する意見や犯罪とアートという線引きに対しての対立構造をドキュメントしているのでわかりやすくその時代で起きていることを感じ取れた。

少年のお母さんが少年がいるところでインタビュー答えてて、少年もお母さんに対して意見しててという構図が面白かった。

グラフィティそのものの犯罪性に対してはちょっとカルチャー寄りに描いている感じはあって、根の自己顕示欲だけでそれをアートだからいいでしょうという風にしてしまうのはちょっと違うかなぁというのはあるので淘汰されたのは仕方がないかなとは思いつつ。グラフィティーはグラフィティーだからこそのかっこよさというか強さはあるので壁や列車に描くということをもう少し許容できるルールが形成できていればなぁという感じはした。バンクシーがあんなになるならねというところであまり正当化するのも良くはないと思うけどもカルチャーが大衆に押し潰されるというのがやはり辛いことなのでもう少し生きる道があったらよかったなとは思ってしまった。

人が書いたグラフィティの上から自分の名前を上書きするというエキセントリックな行為はビビった。ある種所有権なんかないからそれもまたビーフとしては面白いし正当性があるとは言えるけど笑った。書いて良い場所が定まったうえで上書きされていくというのは面白いかもなと。残したい当人たちからすると喧嘩になるんだろうけどやっぱりそれならキャンバスに描こうぜとは思っちゃったなぁ。Bombして名前を見せたいという気持ちはわかるけど、だとしたら消されても文句は言いっこなしかなというところは感じたり(スヤスヤしている間にこの辺言及があったのかもしれないけど)

とにかく出てくる列車のグラフィティが全部かっこいいし壁に描く様もめちゃくちゃに良い。創作の原点というか生々しさを感じるこの表現方法っていうのがヒップホップカルチャーの原風景というかこのエッセンス、即興性とかインスピレーションとか自己表現とか、ボースティングとかが入っているからこそヒップホップはかっこいいし黒人文化が根付いているからこその社会性や批評性を持った深みのあるカルチャーになっているよねというのを再実感できる良い映像作品でした。ほんと教材みたい。

これとワイルドスタイルと、Netflixのヒップホップエボリューションとが70〜90年代のヒップホップカルチャーを学ぶのに最適な教材だなと再実感して全部見切れていないヒップホップエボリューションの続きをちゃんと見ねばと思いました。
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