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ベルリンファイルのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

ベルリンファイル(2013年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

北朝鮮の諜報員であるジョンソンは、アラブ組織との武器取引現場を韓国情報院のジンスに察知されるが、辛くもその場から脱出する。やがてジョンソンは、保安監視員のミョンスから、自分の妻に二重スパイ疑惑がかけられていることを知らされる。彼は自分でも気づかないうちに、大きな陰謀に巻き込まれていた…。

まさに韓国版「ジェイソン・ボーン」。
過去に東西に分断されていたベルリンを舞台に、韓国と北朝鮮の秘密諜報員たちの攻防を描くとは何とも意味深。
キム・ジョンイルから息子のキム・ジョンウンへと権力が世襲された頃の朝鮮半島情勢を盛り込んだ背景は大胆不敵。
硬派なスパイ・サスペンスの秀作だ。

まず、怪しい武器取引現場で突如始まる銃撃戦が素晴らしい。
ビルの上を飛び、ジョン・ウー作品のような零距離射撃と格闘もあり、非常にスピーディーかつスリリング。
胸ぐらを掴まれるような「つかみ」だ。

前半は陰謀渦巻くサスペンス。
ベルリンで北朝鮮と反帝国主義アラブ連盟がロシアの武器ブローカーを仲介にした商談が韓国情報院の横やりが入って取引が中止。
取引の情報はどこから漏れたのか?

情報漏れは北朝鮮に裏切り者がいるためだと、北朝鮮保安監視員のミョンスが介入。
韓国はCIAを巻き込み、情報源を探る。
浮かび上がる二重スパイの存在。
ジョンソンの妻のジョンヒが怪しい!と疑われる。

まさか妻が?とジョンソンの心は揺れる。
しかも妻は妊娠しており、ジョンソンは妻を守るため奮闘する。
真相の輪郭を掴んだところで敵が強襲し、怒濤のアクション展開。
ビルから落ちるし、車にはしがみつくしでハリウッドばりのスタントが見れる。

結局、ジョンソンの妻は夫に隠れて、大使館近くの産婦人科に通っていただけで、二重スパイはジョンソンの後輩である保安監視員ミョンスの仕業だったというオチ。

ミョンスに妻を人質にとられるものの、韓国諜報員のジンスと共闘する展開は、香港ノワールのようで熱い。
ミョンスの迂闊な発言を録音したレコーダーを使うことで仲間割れを誘い、形成が逆転。
死闘の末、ジョンソンがミョンスを倒すも、身重の奧さんはお腹の子もろとも死んでしまう。
やはり韓国サスペンス、安易なハッピーエンドにはしない。

ラストは、同情したジンスが逃がしてくれ、ジョンソンは全ての黒幕であるミョンスの父親を殺しに向かうという続編が作りやすい雰囲気で終わる。
ジョンソンが南へ転向して一件落着ではないのは、韓国のプロパガンダにならず良かった。

総じて緊張感を持続させている硬派なサスペンス。
近接格闘戦や弾が切れた銃を鈍器代わりにしてのアクションも創意工夫が見られる。

難点は、相関図が必要なほど複雑な人物構成と、分かりにくい陰謀の全貌。
そして、展開の速さゆえの主人公夫婦のキャラクター描写の薄さだ。
主人公ジョンソンと妻は、非情な世界に生き、偽装結婚かと思うほどドライな関係に見えたが、妊娠が分かった途端、主人公は変わる。
一体、どこに妻への深い愛の描写があったのか?それが見えなかったのが残念だ。

対立する韓国と北朝鮮だからこそ描ける冷戦時代のような熾烈な水面化での諜報戦。
韓国映画のエンタメへの貪欲さに関心する。
平和な日本では作れない作品であることは確かだ。
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