OASIS

アンチヴァイラルのOASISのレビュー・感想・評価

アンチヴァイラル(2012年製作の映画)
3.4
近未来。
セレブ達が感染した病気のウイルスを売買する企業に勤めるシドは、ウイルスを盗み自身で売りさばく闇取引をしていた。
しかし、有名なセレブの美女ハンナが危篤になった際、事前に彼女のウイルスを自身に注射していたシドは、陰謀に巻き込まれていく。

鬼才デヴィッド・クローネンバーグの息子であるブランドン・クローネンバーグの初監督作品。
オヤジが初期に撮った映画たちの影響をそこかしこに感じるが、既に独自の世界観を確率している。
見た目からして重大な病魔に侵されていそうな主人公役ケイレブ・ランドリー・ジョーンの存在が目を引く。
部屋や家具等、白で統一された世界が血の色を鮮やかに見せていて、時折挿入される肉々しいイメージが気持ち悪さを感じさせる。

セレブやスター達を崇める人々が、自分も彼らとつながりたいという思いを極限にまで形にするとこういう商売に行き着くのかと思った。
ウイルスが注入された肉を販売して、それに行列が出来るなんていうのはもはや狂気さえ感じる現象である。
芸能人が吸ったタバコを拾って間接キスするなどという行為が可愛く見える程。

主人公は企業が所有している機械「レディ・フェイス」をなぜか自宅に持っていて、それが壊れてしまった事から陰謀に巻き込まれていくが、そもそもなぜその機械を手に入れる事ができたのかも分からなかった。
最低限説明されるべき所が不親切なので自身で補完する必要が出てくるけども、ちょっと今まで見たがないような設定だったので楽しめた。

絶世の美女ことハンナの透き通るような白い肌も美しくまた血の色に映える。
彼女の主治医としてマルコム・マクダウェルも登場するが、彼が出てくる事から「時計じかけのオレンジ」にも影響を受けている事は明らか。
これからの作品が楽しみなデビュー作でした。
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