生永這人

アンチヴァイラルの生永這人のレビュー・感想・評価

アンチヴァイラル(2012年製作の映画)
3.8
もはや人間の域を超えて存在する「セレブ」という大衆が作り出した概念体は、一度神々しく崇められ、「憧憬」つまり精神世界の幻となっていた筈ですが、その憧憬が、近未来では肥大化した「欲望」に依って、ついぞ資本主義社会と生物倫理を巻き込みながら動物レベルに堕ちる、そういう物語です。

いやしかし「人類への警鐘」と捉えるには余りにも「変態チック」な固執っぷりばかりですので、理由は定かでないが生理的に無理!と嫌悪剥き出しの鑑賞者も多々居るのではと安易に想像がつきます。
そして、セレブが患ったのと同じウィルスで自分も苦しみたい!と、それで人生に潤いが出るのだ!と、この自ら感染者となりたい動機が少しでも分かるかどうかが、本作を楽しめるか否かの別れ道ですから、もう駄目な人にはダメ、気味の悪い異常世界だと思われても仕方がないのでしょうけれども、どうか怒らないで本作の存在自体を無視していただきたいとさえ私は思います。

ストーリーは一旦忘れまして、色調・構図がとにかく素晴らしいんですね。人と物と何もない空間、この三つのなんと均衡の取れていることか。美しい。
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