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オンディーヌ 海辺の恋人のHKのレビュー・感想・評価

オンディーヌ 海辺の恋人(2009年製作の映画)
3.7
オンディーヌはウンディーネとも言われる神話上の水の精霊。『人魚姫』のストーリーの原型となった戯曲のタイトルでもあり、その姿はよく人魚と同一視されます。
本作は監督ニール・ジョーダンで主演コリン・ファレルなのに日本劇場未公開。
確かにアマプラでみつけるまで存在も知りませんでした。

人魚が出る映画はたくさんありますが、狼男や吸血鬼が好きなジョーダン監督も撮りたかったのかも、くらいの軽い気持ちであまり期待もせずに観てみると・・・
いろいろと良い意味での誤算もあり、意外や本作はとても好きなタイプの映画でした。

アイルランドの孤独な漁師(ファレル)がある日、漁の網に若い女性がかかっているのを見つけます。
文字通り美女を釣り上げたわけですが、謎めいたその美女は自分の素性を明かしません。
彼女が船上で歌うといきなり大漁になるのは単なる偶然なのか・・・

漁師の元妻と暮らす一人娘は彼女を見て“セルキー”だと言います。
セルキーとはスコットランドの民間伝承の海中に住む種族のこと。
ふだん海中ではアザラシの姿をしていますが、陸にあがるとアザラシの皮を脱いで人間の姿になるといいます。
これもまあ一種の人魚伝説と言えるのでしょう。

脱いだアザラシの皮を隠されると海に戻れなくなり、人間と結婚して子供ができますが、毛皮が見つかると一人で海に帰ってしまうという話もあるとか。
お気づきのとおり、日本の“天女の羽衣”や“雪女” の話にそっくりです。
調べると、日本独自のお話だと思っていたら世界各地に同様の伝説があるらしいと知ってちょっとビックリ。勉強になりました。
ラフィカディオ・ハーンはギリシャの人ですが、これら各地の伝説を知った上で日本の風土と掛け合わせて“雪女”を創作したのかもしれませんね。

で、この海から現れた女性、本当にセルキーなのでしょうか。
それとも・・・
見終わった後も心地よい余韻の残る拾い物でした。
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