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男として死ぬのTOTのレビュー・感想・評価

男として死ぬ(2009年製作の映画)
4.2
良い、良すぎる。
自己と性から乖離する肉体の変容、その孤独を癒し、また苦痛も与えた愛と信仰。
冒頭、折り紙での鮮やかなテーマの表明。
暗い森の兵士、湖の横移動、赤い月の下の360度パン、病院のベッドの上で痩せ細った体をゆっくりと上がっていく視線、ラストの高低を繋ぐ長回しロングショット。
技巧と意思が見せる丁寧で美しいショットの数々。
探す者か迷う者しか訪れないというマリアの家が、生と死を繋ぐような異世界、夢幻的境界になっているのがとてもいい。
Baby Dee「Calvery」をフルで聞かせる、赤い月の下で全てが赤く染まるシーンの、現世から離れる浮遊感、自分まで赤く染まるようにむせ返る生々しさ。
アピチャッポンのトロピカル・マラディとの同時代性も考えたり。
また観たい。

EUフィルムデーズ2017にて
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