メグスリ

愛のコリーダのメグスリのレビュー・感想・評価

愛のコリーダ(1976年製作の映画)
3.4
房中術でも「気を送り合い、気を高める」とは言うが、過剰なセックスで文字通り気が狂っていく様子が凄まじい。男の描かれ方はまさに宵越しの銭は持たぬを体現する江戸っ子という風合いで、妻に関係がばれても女中に営みの邪魔をされても定の気狂いが始まっても動じない度胸には圧倒される。
作中はセックスシーンもさることながらお座敷遊びや唄のシーンが多かったことと、裸の男女の子供が駆けずり回るシーンや定の心象風景を舞台的に演出している場面などが映画的で興味深かった。

良い悪いはこの際触れないとして、性愛を強く押し出す映画は元来思想の強い作品と相場は決まっているが、あらためて男女恋愛至上主義のイデオロギーが濃かった時代の作品だなあとタイムマシンに乗るような気持ちで見た。ジェンダーの向こう側を覗こうとしている今の時代、これほど思想の強さを出せる作品があるかしらとも感じた。