ぺっこり180度

アンコール!!のぺっこり180度のレビュー・感想・評価

アンコール!!(2012年製作の映画)
1.7
ヒューマンドラマ、感動作
…を作りたかったんだろうけど。

制作者がラストシーンの感動を先に想定して物語を膨らませたような、そのために人物の自然な心の移り変わりが犠牲になったような作品。
愛する人の死、確執からの和解、年配者が頑張る等々感動しそうなエピソードをあちこちから持ってきて順序良く並べたような作品。

一見いい話だから、観て感動する人も結構いるはず。
鑑賞者はそうなるのはやむを得ないと思う。

だけどこういう作品を作る人を私はクリエイターとして信用しない。

ヒューマンドラマで感動するのは、
しっかりと「人間」が描かれていて、時間をかけてその機微に触れた時だ。
なのに本作では物語の核となる主人公である父と息子の確執に嘘くささが付きまとう。
作者が「感動させよう」という利己的な欲求からご都合主義に走っている。
そこにあるのはあざとさと不誠実。
でもそれに多分クリエイター本人は気づいてないのだろう。質が悪い。
(ちなみに気づいててやってるんだったら更に質は悪い。)

脚本の問題かなあ監督の問題かなあと見てみたら
脚本・監督同じ人ですね。
私は心から苦手。

良かったのはシンディ・ローパーの トゥルーカラーズはやっぱり名曲だなと思い出せた点。

以下備忘。詳細をメモ。
特に大きな事件がありぎくしゃくしているわけではない
父の性格により長年にわたり親子が上手くいかなくなったという設定。
しかし主人公妻との関係を見ると、また、孫が主人公に接する様子や音楽教師への対応を見ると、主人公は自己表現は上手ではないが本質的には優しい人だと伝わる。
それが、滅多に合わない人ならまだしも、何十年も一緒にいた自分の子に伝わっていないというのは随分ご都合主義。
「家族だからこそそうなる」という擁護は可能かもしれないが、物語前半でその部分は描き切れていない。
百歩譲って「人間、誰しも合わない人間はいるもの」で、残念ながらこの親子はそういう間柄だったとしても、だったらラストシーンへと繋がるのは矛盾する。
終始の二人の関りは中途半端で、無理やり仲悪い演技をさせられているような違和感がある。