砂場

三百六十五夜 東京篇の砂場のレビュー・感想・評価

三百六十五夜 東京篇(1948年製作の映画)
4.1
最初はコテコテのメロドラマであるが、ハードボイルド的になってゆく。
ツンデレ蘭子を演じる高峰秀子が良い!
まずはあらすじから



ーーーあらすじーーー
■建設会社に勤める川北小六(上原謙)、会社に電話、相手は蘭子だった、すぐ会いに来て、、、
小六はしつこい蘭子から逃げ惑っていた、同僚がいい物件を紹介してくれた
■蘭子(高峰秀子)は髭の男の部屋で会社の決算を確認、裏社会ビジネスでは男はやり手だった。
■物件を見に大江邸に来た小六、申し込みが多く65番目ときいてがっかりする。
家主の大江しづ(吉川満子)は小六に色々話を聞くと、小六の父が川北組の社長で、大江邸は川北組の建築だった。これも何かの縁ですね
美しい娘照子(山根寿子)の夫はまだ復員せずだった。
結婚していると聞いてがっかりする小六、新生活が始まった。
物音がする、強盗がしづと女中を縛っていた、2階で照子が強盗に襲われそうなところを小六が助けた。
本人に聞くと照子は独身だった、母の考えで周囲には既婚であると伝えていたのだった
誰にでも秘密があるものだ
■母が行けなくなったのでカルメンの舞台を小六と照子で行くことに、そこには津川と蘭子もいた。蘭子は今晩つきおうてというが小六は断る、
その帰り、照子と小六、照子と呼んでください、あなたを深く慕っています、キス
■大江邸に小六の父が来ていた、川北組が倒産の危機で小牧物産と話をつけ、小牧蘭子との結婚前提に川北組を救済する計画。
川北組を救うため150万円が必要だった。小六はその縁談を断り、自分が金をなんとか工面すると父に言う。
それを影で聞いていた照子は小六に黙って津川に家を抵当に150万円借りる。
150万円を津川から調達した話を小六にすると、あの男は悪人なのですぐ返そう、それなら蘭子と結婚した方がましだと言う。
■家を出ていた照子の父がやってきて1万円都合してくれと母に
頼むが断られる。その時150万円の小切手を見つけ、それを盗んで逃げる。
■父は気が大きくなりキャバレーで酔っ払っているところ、その小切手を津川が強奪する。
■小六は、津川に返済を待ってもらう、大阪で一山当てて借金を返そうとした。しかし競馬も全くだめ
照子と母は邸宅から追い出された。照子はモデルの仕事をする
が着替えを盗撮されており、それが流出、小六の知るところとなる。さらに津川と待合にいる当情報があった。
待合を逃げてきた照子だが、小六は津川と待合に行っただろう、二度と顔を見たくない
■小六は病んで蘭子のところにいた。照子は写真を取り返そうとするがモデルの部屋に閉じ込められた、津川の配下の父が照子を逃す。あなたはお父さん、、、
照子は終われるが宮田(大日方伝)という画家が追っ払う。
照子はその画家の油絵のモデルに
小六はおでんやで飲んだくれている、川北組は潰れた、小牧商事は津川傘下になったらしい。
■宮田画伯の絵が入選した。個展に来ていた小六と照子は再会、宮田画伯は小六を叱る、照子さんは君を愛しているんだ。小六は輝子に謝罪するが、あなたのほどこしは受けません
■母が倒れもう先がない、母は照子と小六の結婚を最後に見たかった。照子は母のために形だけの結婚式をする。
暗い結婚式、母は、一生懸命、小六さんのお気にいるようにと言う言葉を残し死んだ。
■蘭子は輝子を描いた絵を破る、照子は小六を立ち直らせるのは蘭子しかいないと言うと去っていった。
■照子の父がおでん屋で小六を見つけ、小切手も写真も全て津川のカラクリだと言うことを告白、
■小六は津川の事務所に殴り込みをかけるが殴打され、蘭子の部屋に運び込まれた。小六は目を覚ますと出て行った

<💢以下ネタバレあり💢>
■照子はナイフを忍ばせ津川を踊りに誘う、そこに小六が来て津川を殴打、しかし津川が反撃、その時照子の父がナイフで津川を刺した、
津川の最後の言葉、人は血にまみれて生まれ、血にまみれて死ぬ
■父は警察に連行された。輝子を頼む、
抱き合う小六と照子
闇社会の大物の死は新聞にもセンセーショナルに記事にされた
蘭子はゴルフをしている
ーーーあらすじ終わりーーー


🎥🎥🎥
1948年の空前の大ヒット作だったらしい、、上原謙の人気も相当あっただろうしストーリーもメロドラマの王道で受けるのもわかる。
ただあまり現代では見られていない一作だろう。文芸的に格調が高いわけではないけどもコッテリしたメロドラマもたまにはいいものである。

転落していく男と女、そもそも二人とも借金に関する考えが浅はかであり上流階級だった二人がみるみる転落してゆく。
上原謙というのはイケメンではあるがぼーっとしている印象があるのだけど、本作のような役はあっていると思う。

原作は一般的人気を博した恋愛小説であり、メロドラマらしく一応収まるところに収まる結末、ただ最後までかなり暗い。
小六も照子も不幸なすれ違いが重なって疑心暗鬼のまま結婚式をする、あんなに暗い結婚式というのもなかなか見たことがないな、
この暗さは市川崑っぽい部分だろう。

本作は市川崑が新東宝にいた時期の作品。東宝から分離独立したお家騒動の際に、市川崑も新東宝に加わった。
俳優では東宝の組合を脱退した「十人の旗の会」に今作の山根寿子、高峰秀子も参加した。
市川崑、山根寿子、高峰秀子としては独立まもない時の一作であり相当な気合を入れて望んだのではないだろうか。結果大ヒットしてよかった
小津も「宗方姉妹」一作だけ新東宝制作があって、小津の中でも独特の魅力がある。
その後新東宝は潰れちゃうんだけども、文芸系からエログロ系まで独自の存在感があったと思う。

この時代の撮影所システムって監督も俳優もエネルギッシュだよなあ

津川の最後の言葉、”人は血にまみれて生まれ、血にまみれて死ぬ”
がとてもハードボイルド❗️
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