リトルロック高校事件が起きた頃のアメリカ南部の町を舞台にした、差別主義者が放つ陰謀論や差別扇動によって民衆が暴走していく様を描いた社会派映画。
ロジャーコーマンが本気で挑んだ傑作の一つ。
この映画はアメリカ中南部、リトルロックにほど近いミズーリ州のサイクストンで撮影されており、主要人物を除くエキストラは本物の現地の住民達だ。
劇中では、町の住民達が差別主義者の発言にえらく同調してしまい、融合教育後の学校に通う黒人の若者に対して酷い差別を行うようになるんだけど、中には(これ絶対に演技じゃないよな)ってのがちらほらあったりする。
更には、これが映画の撮影だと分かってた上で差別発言や陰謀論に賛同してた人もいたそうで、
現地を訪れたロジャーコーマンは、
(あの連中は彼みたいな差別主義者が本当に大好きなんだな)
と凄く実感したそう。
そしてそれを直にスクリーンに映すことによって、差別主義や陰謀論なんかを痛烈に批判しています。
撮影中にはロジャーコーマンや主演のウィリアムシャトナーに対して脅迫状や殺害予告が送られたり、町の保安官が彼らを逮捕しようとしていたそうだ。
話の最後では数々の嘘と差別を振り撒いた男は誰からも信用されなくなり、当然の報いを受けることとなる。
しかし、町の白人達が最後まで罰を受けなかったのは胸糞悪い。
ロジャーコーマンが製作した作品は、明るく楽しい映画が多い中でこの映画だけはもの凄く暗いです。
この映画が公開されてからもう半世紀以上経つこととなる。
あの町は変わったんだろうか。
変わるんだろうか。
「これがアメリカの現状さ
誰かが言うべきだ
"これでは自由の国ではないと"」
ジーンコーマン